Noble Oak / Past Life [review③]

アルバム紹介③

序盤戦、ここまで4曲中3曲がインストでしたが、ここからはしばらく唄ものが続きます。
そして前半のハイライトがこのあたりだと思います。

⑤All I Said

ダウンテンポに落とし込まれた洒脱なフュージョン感と艶やかなサウンドの中に、大人の色香を匂わせます。
感傷的な喪失感と、感情的になり過ぎないエモーションに、SeoulやRyheなどの10年代的なセンスが伺えます。

⑥No Air

テクスチャーが初期のRadioheadに近いと感じます。バンドサウンドとの違いと、「クセ」や「ひね」が控えめな分、それよりも彼の純度がより強く出ていて、親しみやすい耳になじむ楽曲。

そして前半の山場、⑦Hyperionに続きます。(紹介はリンクをご参照ください。)

ここの流れは本当にすばらしくて、おそらくは無意識にせよ90年代から10年代までの幅広いリスナーを繋ぐ、もしくは安心させるサウンドプロダクションで、
無闇矢鱈に自己主張して投げっぱなしでぶち上げることのない、自然の緩やかな高揚感が楽しめます。

僕はこのアルバムを「ベッドルームポップ」の傑作だと思ってはばからないのですが、
それはそれぞれの楽曲に纏う雰囲気と、作品全体の醸し出す空気が、
よそよそしさのない、変に構えることのない、普段着でいつものリズムで(時たま気分も良くなったり、はたまたちょっと塞ぎ込んだり、)日常に染み込んでくる音楽だからだと感じるからです。パジャマで踊れる音楽です。

つづく


pur